婚姻費用を最大限に獲得する|弁護士が教える5つのポイント

婚姻費用を最大限に獲得する

配偶者と別居したいけど、生活できるだけのお金が心配で中々別居できない、そのような悩みを抱えている方は大勢いらっしゃると思います。

「自分だけの収入だけで生活できるのか」

「子どもの生活費や学校の費用を相手から払ってもらえるのか」

「離婚するために別居すると生活費を支払ってもらえないのでは」

いろいろ悩みは尽きません。

しかし、別居中であっても、夫婦であることに変わりはないのですから、法律上は、収入の多い方から少ない方へ生活のためのお金を援助しなければならないことが規定されています。

これを「婚姻費用」と言います。

養育費に比べると知名度がある用語ではないので、存在自体知らずに、別居に踏み切れない方や、別居しても1円も生活費を支払ってもらえないまま長い時間が過ぎ大きな損をしている方が大勢いらっしゃいます。

そこで、本記事では、この婚姻費用をきちんと、それも最大限獲得するために知っておくべきポイントを解説していきたいと思います。

このポイントをしっかり抑え、安心して別居中の生活が確保できるようにしていきましょう。

ポイント1 必要な基礎知識

まず、婚姻費用の基礎知識を確認しましょう。

これは、将来実際に婚姻費用を請求するときは必ず必要となる知識ですから、しっかりとおさえることが必要です。

1-1 婚姻費用とは

姻費用は「別居中の夫婦間で、収入の多い方から少ない方に支払う生活のためのお金」です。

夫婦である以上、法律的には助け合わなければなりません。(=夫婦間の扶助義務)

収入の多い方から少ない方に生活費を援助することが義務付けられています。

収入が少ない方が子どもと一緒に別居している場合、子どもの生活費も含まれます。

婚姻費用は、お互いの年収や子どもの人数、年齢に応じて毎月一定の額のお金を定めます。

子どものための生活費だけではなく配偶者の生活費も含まれる
離婚するまで、または同居を再開するまでは支払われるお金なので、離婚した後は支払われない

1-2 婚姻費用の金額

(1)算定表

具体的な金額は、「算定表」という表を使って算定する方法が一般的です。以下の手順でご自身の場合の婚姻費用の金額を確認してみてください。

ステップ1 算定表の入手

まず、以下のURLから算定表をダウンロードできます。

  http://www.courts.go.jp/tokyo-f/vcms_lf/santeihyo.pdf

最初に数ページの解説文が続いた後、突然、変な縞模様のような表が出てきたと思います。この表が算定表で、現在の裁判では、この算定表に従っておよその婚姻費用が月額支払方式で決められます。

ただ、この表には養育費の表と婚姻費用の表が一緒に載っています。養育費も互いの年収や子どもの人数、年齢を基準に決められるので、同じような表が作られているのです。

今回は婚姻費用ですので、表10以降からの表が適用されます。

ステップ2 子どもの有無、年齢、人数に合致した表を選ぶ

算定表は、ご覧の通り、お子さんがいるかどうか、いるとして、どのくらいの年齢や人数なのかによって、適用される表が分かれています。

この中からご自身の場合に合致する表を選びます。

ステップ3 自分と相手の年収を確認

次に、権利者つまり婚姻費用を払ってもらう自分の年収と、義務者つまり相手の年収が幾らなのかを確認します。

この年収とは、給与の場合は総支給額、事業所得の場合は、確定申告書でいう「課税される所得金額」を指しますので、ご注意ください。

算定表では、権利者の年収が横軸、義務者の年収が縦軸となっているので、お互いの年収が交差するポイントのある領域が、およその婚費用額です。ただ、表自体は、見てのとおり、2万円程度の幅があります。この幅の中で諸般の事情を勘案して、妥当なところを探るというのが基本的な考え方です。

(2)具体例

具体例で見ていきましょう。

  • 夫:会社勤めで年収800万円
  • 妻:会社勤めで年収300万円
  • 子:17歳の息子と13歳の娘の2人。妻と一緒に暮らしている。

この場合、「表14 婚姻費用・子2人表(第1子15~19歳、第2子0~14歳)」という表が適用されます。

算定表記入例

夫の年収が800万円、妻が300万円ですので、それぞれが交差するポイントは、「14万円~16万円」の領域の下の方にあります。

したがって、この場合の養育費額は、「月額約14万円」ということになります。

(3)詳しい計算式

婚姻費用は、算定表で額を算定するほかに、一定の計算式に基づいて算定することもできます。この計算式を使うとさらに詳しい金額を求めることができます。

(権利者及び義務者の基礎収入の合計×権利者及び子の生活指数の合計÷家族全員の生活指数の合計―権利者の基礎収入)÷12

かなりややこしい計算式で、聞きなれない言葉も出てきますが、まず用語の解説からしていきたいと思います。

  • 基礎収入:簡単に言えば、収入を得るために必要な経費(税や保険 の控除等)を引いた自由に使えるお金と思っていただければ結構です。
  • 給与収入と事業所得では、必要経費の額が違ってきますので、おおむね、下の表を参照に基礎収入を割り出しています。

    婚姻費用

    事業所得者の方が基礎収入割合が多くなるのは、給与書と違って、キャッシュフローがあるということを考えてのことです。

  • 生活指数:生活にかかる費用を、大人を100とした場合の子どもの生活費の割合を表したもので、固定で数字が決まっています。
  • 15~19歳の子の生活指数は90、14歳以下の子の生活指数は55です。

    この基礎収入と生活指数を基に計算していきます。

    まず権利者の基礎収入と義務者の基礎収入の合計額に、権利者と子どもの生活指数合計を分子、義務者も含めた家族全員の生活指数合計を分母とした分数をかけます。

    これが「権利者と子どもにかかる生活費」ということになります。

    さらに、この値をから権利者の基礎収入を引くことで、年額いくら義務者から援助される必要があるかを算定し、あとは月額に直すため÷12をするだけです。

    先ほどの具体例(夫:会社勤めで年収800万円、妻:会社勤めで年収300万円、17歳の息子と13歳の娘の2人が妻といる)で計算してみましょう。

    まず、夫の基礎収入は800万円×36%、妻の基礎収入は300万円✕38%となりますから、夫の基礎収入は288万円、妻の基礎収入は114万円となります。夫婦合わせて合計で402万円です。

    子供は17歳の息子と13歳の娘ですから、生活指数はそれぞれ90、55となり、合計で145です。夫との妻の生活指数はそれぞれ100ですから、家族全体では345、権利者世帯(妻と子二人)では245です。

    以上を当てはめていきます。

  • (402万円×245÷345―114万円)÷12=14万2898円(小数点四捨五入)
  • 表上は14万円~16万円の領域の下の方ですが、上記計算式により、より具体的な金額が明らかとなりました。

1-3 婚姻期間中はずっと支払われる。ただし子どもが20歳になれば変わる。

婚姻費用は、結婚している限りはずっと支払ってもらえます。

しかし、子どもがいる場合、その子どもが20歳になれば、その子はいないものとして扱われます。

算定表で言えば、その子どもしかいないのであれば、「夫婦のみ」の表が適用されますし、他に未成年の子が1人入れば、「子1人表」が適用される ことになります。

1-4 永久に「仮決め」の宿命

婚姻費用の金額は、双方の年収と、子どもの年齢、人数によって決まりますから、これらの事情が変化すれば、当然、金額も変わります。

その意味で婚姻費用は、いったん決まったからと言って永久に変わらないわけではなく、永久に「仮決め」の状態であると言えます。

ポイント2 請求する手続きと方法を選ぶ

2-1 3つの方法

婚姻費用を請求する手続きと方法としては、以下の通り3つの方法、手続きがあります。

(1)協議

まず、夫婦で互いに、金額や支払方法を協議し、支払ってもらう方法です。これが一番簡単ですが、相手が話合いに応じない場合、または互いに合意できない場合はそれまで、という限界があります。

(2)調停

離婚調停と同じように家庭裁判所に調停を提起し、調停委員の仲介のもと、裁判所で金額や支払方法などについて協議する方法があります。

この協議で話合いがまとまれば、「調停成立」となり、合意したことが「調停調書」という書面でまとめられます。

(3)審判

調停での話合いもうまく行かない場合は、この手続きに移行します。

審判とは、訴訟と似たような裁判手続きで、裁判官が法廷(正確には「審判廷」といいますが)で行う裁判のことです。

最終的には裁判官が「審判決定」(判決のようなもの)で金額や支払方法が決められます。

この「審判決定」に対しては、訴訟の判決と同じように、決定内容に不服があれば高等裁判所に不服申し立てをすることができますので、場合によっては内容が確定するまでかなり時間がかかることもあります。

なお、調停を飛ばしていきなりこの審判を提起することもできますが、裁判官の裁量で調停手続きに移行される可能性があります。

2-2 相手の状況に応じて請求する方法を選ぶ

以上の通り3つの方法がありますが、法律上はどの方法で請求しても構いません。

しかし、相手が話合い自体を拒絶している場合には、協議を重ねたところで時間の無駄ですから、いきなり調停や審判を提起することから始めても良いでしょう。

逆に相手が支払う意向を示し、限りなくこちらの要望通り支払ってくれる可能性が高いのであれば、時間のかかる調停や審判ではなく、協議して合意した方が早いです。

どちらともつかない場合は、まずは1回だけ協議を試みて、ダメそうであればすぐさま調停や審判を提起する、という段取りも有効です。

相手の状況に応じて請求する方法を選びましょう。

2-3 協議でまとまりそうな場合も可能なら公正証書にまとめる

協議で合意する場合は、裁判ではないので特に決まった方式があるわけではありませんが、公正証書で合意すれば、それに違反した場合、直ちに強制執行をとることができますので、より安心です。

ポイント3 裁判では年収に関する証拠を揃える

調停や審判といった裁判手続で請求する場合、調停委員や裁判官ももちろん、算定表や計算式をもとに婚姻費用を算定し、それを基に裁判が進みます。

算定表や計算式では、双方の年収によって金額が変わるので、双方の年収を証拠によって明らかにする必要があります。

3-1 自分の年収の証拠

相手の年収についても、源泉徴収票や確定申告書、給与明細ということになります。

これを相手が素直に提出してくれれば良いですが、中々応じない人も多い上に、別居している状態ではこちらだけで相手の正確な年収を知ることは困難な場合が多いと思います。

3-2 相手の年収の証拠

相手の年収についても、源泉徴収票や確定申告書、給与明細ということになります。

これを相手が素直に提出してくれれば良いですが、中々応じない人も多い上に、別居している状態ではこちらだけで相手の正確な年収を知ることは困難な場合が多いと思います。

3-3 調査嘱託

その場合は、裁判所を通じて、相手の勤務先に直接相手の年間給与額を調査する方法があります。これを「調査嘱託」と言います。

具体的には裁判所に「相手の勤務先に相手の給与額を調査してほしい」と申し立てて、裁判所が書面で勤務先に照会請求し、勤務先がそれに対して書面で回答する、という方法がとられています。

強制力はないので、絶対というわけではありませんが、相手の勤務先が分かっている場合はかなり有効な方法です。

ポイント4 高額な学費や医療費も負担してもらうには

1.請求の時点で、費用が確定していること
2.その支出について合意があること

上記二点の条件を満たしていることが必要

高額な学費や医療費は、特別出費として別枠で認められる可能性があります。

日本は依然として教育費用が高いので、学費の負担は離婚後の家計に重くのしかかってきます。

また、お子さんが重病を患っていて、高額な医療費がかかる場合など、とても、決められた婚姻費用だけではまかないきれないことも発生してきます。

養育費にも同様の問題がありますが、そんな時、こういった、特別の出費を年収に応じて分担してもらおうという請求が、「特別出費部分の請求」です。

ただ、何でも認められるわけではありません。お子さんを育てていく 際にどうしても必要な費用であるとともに、

  1. 請求の時点で、費用が確定していること
  2. その支出について合意があること

が条件となります。大学に合格して、学費が決まっていて、支払う方も大学に進学することは認めていて、「がんばれよ」と励ましていた、なんていう事案であれば、合意も認定しやすくなります。

しかし、大学と言っても私立か国立か、あるいは、学部によっても学費はずいぶん開きがありますから、どこまで確定的な合意をしていたのかは、重大なポイントとなります。何年も音信不通だった配偶者から、突然、子どもが私立の医学部にいくので、3千万円だしてくれ、といわれても、困りますから、当然のことです。

ポイント5 不払いが起きたときの対処法

協議や調停、審判で婚姻費用の額や支払方法が決まったにもかかわらず、相手がそれに従わず、実際に支払ってくれない場合は、強制執行を取る方法が考えられます。

5-1 調停や審判、公正証書で決めた場合

この場合は、合意事項に違反すれば、相手の財産に強制執行をすることができます。

具体的には、調停調書または審判決定を基に、相手名義の銀行口座、給与、不動産等の財産を差し押さえることになります。

仕組みは簡単ですが、手続きが難しいので、弁護士に依頼されるのが良いと思います。

5-2 公正証書以外の協議で決めた場合

この場合は、相手が違反したからと言って直ちに強制執行はできませんので、改めて調停や審判を提起することが必要です。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

専門的で難しい話もありましたが、婚姻費用とは、基本的には双方の年収額と子どもの年齢、人数を確認し、該当する算定表に従っていくだけの単純な話です。

もちろん、婚姻費用で生活のすべてをまかなうことはできませんので、限界はあります。

しかし、それでも一定の金額を毎月受け取ることができるというのは大きなメリットがある事であり、特にお子さんがいらっしゃる方は、お子さんにとっても必要なお金ですから、本項でのポイントおさえ、ぜひとも最大限の物を獲得していただく一助になれば幸いです。

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