寄与分とは? ~長男の嫁の悲哀~

寄与分とは

相続財産への貢献を、どう遺産分割に生かすことができるのか

相続が起こったとき、基本的には法定相続人が法定相続分に従って相続をすることになります。兄弟が長男、次男といたとして、基本は2分の1です。しかし、よくある問題として、認知症を患い、徘徊する親を長男の嫁が必死で介護し、何とか施設にいれないで、家出最後を看取った、などという場合、おかげで何百万という介護費用を使わないですみ、これが遺産として残っていたとします。この遺産を純粋に2分の1ずつ、兄弟で分割したのでは、長男の嫁の寝ずの24時間介護は何だったのだろうということになります。

このように、相続人の中に特別に遺産の形成や維持に貢献した人がいる場合には、単純に法定相続分に応じて遺産を分けると不公平になることから、「寄与分」という制度が生まれました。相続財産への貢献度を「寄与分」として、認定し、公平を計ろうという制度です。ただし、寄与分は常に認められるわけではありませんし、寄与分が無制限に主張されると相続人同士で終わりのないトラブルになってしまいます。

そこで今回は、寄与分が認められるケースと計算方法、請求方法などを解説します。

1 寄与分とは

寄与分とは、遺産の維持や形成に特別に貢献した相続人がいる場合に、その相続人の遺産取得分を多めに認める比率のことです。

相続が起こったとき、基本的には法定相続人が法定相続分に応じて遺産を受け取ります。たとえば、子ども4人が法定相続人になっているケースでは、子どもがそれぞれ4分の1の遺産を相続します。

しかし、子どもたちの中で、長女が長年父親の事業を無償で手伝ってきた場合には、長女の相続分を増やさないと他の子どもとの間で不公平になってしまいます。

そこで、このような場合には長女に寄与分を認めて、他の相続人よりもその取得分を多くするのです。

寄与分が認められるのは、相続人が遺産の維持や形成に対し、特別な貢献をした場合です。寄与分が認められるためには、寄与者が相続人である必要があり、無関係の第三者が遺産の増加に貢献しても寄与分は認められません。

寄与によって遺産が実際に増えたり維持されたりしなければならないので、被相続人を精神的に応援していただけのケースでは寄与分は認められません。

また、寄与分が認められるための貢献は「特別」なものである必要があり、通常の身分関係から当然期待されるようなものでは寄与分にはなりません。

2 寄与分を主張できる人

次に、寄与分を主張できるのは、どのような人なのかを見てみましょう。

寄与分が認められるのは、共同相続人なので、相続人になっていない人は寄与分を主張できません。後順位相続人であっても、自分が法定相続人になっていない限りは寄与分を主張することはできないことになります。

ただし、相続人の配偶者や子どもなどが寄与行為をしていた場合には、それらの寄与行為を相続人によるものと同視して、相続人の寄与分を認めることができます。例えば、表題で述べたような、長男の嫁が、長男の親を献身的に介護していたような場合です。こういった場合、妻や娘による寄与行為を長男のものと同視して、長男に寄与分を認めることが可能です。

3 寄与分が認められるケース

それでは、寄与分は具体的にどのようなケースで認められるのか、見てみましょう。寄与分が認められる場合には、いくつかのパターンがあります。

(1) 家業従事型

まずは、家業従事型のケースです。これは、相続人が被相続人の家業に長年献身的に従事して、遺産の維持や形成に貢献した場合です。

たとえば、子どもが父親が経営している商店や飲食店、八百屋、病院や農業などを長年無給で手伝っていた場合などに認められます。

家業従事型の寄与分が認められるためには、無給やそれに近い状態で家業を手伝っていた必要があり、それなりに給料をもらっていた場合には寄与分は認められません。

(2) 財産出資型

財産出資型の寄与分もあります。これは、相続人が被相続人に対してお金を出したケースです。

たとえば、被相続人である夫が家を購入する際に相続人のである妻が独身時代から貯めていたお金を出したケースや、被相続人が事業を開始するときに、相続人の一人が事業資金を援助した場合、被相続人が借金していた場合に相続人の一人が代わりに返済してあげた場合などがこれに該当します。

(3) 療養介護型

近年寄与分の主張事例として多いのが、療養介護型です。これは、被相続人が介護を必要としたとき、相続人が長年療養介護にあたったケースで認められます。

たとえば、被相続人である母親を長年長女が介護し続けた場合などに寄与分が認められます。

療養介護型の寄与分が認められるためには、特別の寄与である必要があるので、身分関係から通常期待されるような内容では寄与分は認められません。また、介護の度合いとしては、要介護度2以上の場合に寄与分を認めることができると考えられています。

(4) 扶養型

被相続人が生活に困窮している場合に相続人が扶養した場合にも寄与分が認められます。

たとえば、生活費を出していたケースや、実際に被相続人を引き取って面倒を見ていたケースなどです。

(5) 財産管理型

相続人が、被相続人の財産を管理することによって、職業管理人などを雇わずに済み、遺産を維持できた場合などには財産管理型の寄与分が認められます。

たとえば、相続人である息子が被相続人の所有する不動産を管理していたために、不動産管理会社に依頼せずに済んだので費用支出を免れた場合などに寄与分が認められる可能性があります。

4 寄与分の計算方法

それでは、寄与分は具体的にどのように計算すれば良いのか、以下で見てみましょう。

まず、家業従事型のケースを見てみます。この場合、本来相続人が受け取るべきであった給与額に業務に従事していた年数をかけます。ただ、生活の面倒を見てもらっていた可能性があるので、その分の生活費を控除します。

たとえば、本来の給与受け取り分が月給20万円で、10年間農業を手伝い続けた相続人がいる場合、生活費控除率を0.3とすると、

240万円 × 10年 × (1-0.3) = 1680万円

の寄与分となります。

療養介護型の場合、介護報酬に介護日数をかけて、裁量的な割合をかけ算します。

たとえば、要介護度が2の場合、介護報酬の日当が5840円ですが、介護日数が10年間で、裁量的な割合が0.6の場合には、

5840×3652日×0.6=1279万6608円

の寄与分が認められます。

財産出資型の場合には、出資した財産額が基準となりますし、扶養型の場合には、生活保護基準を使って計算したり、実際に支出した費用を基準にしたりします。

財産管理型の場合には、実際に専門業者を雇った場合の費用が基準になります。

5 寄与分の請求方法

寄与分を請求したい場合には、寄与者が自分で寄与分の主張をしなければなりません。自動的に寄与分を認めてもらえることはないからです。

そこで、遺産分割協議において、寄与分の計算をしてその分を寄与分として認めてもらうよう、他の相続人に対して主張します。このとき、他の相続人がこれを受け入れたら、寄与分があることを前提として遺産分割協議を進めることができます。

しかし、寄与分を主張しても、他の相続人が認めないことが多く、その場合には、遺産分割調停を起こして、その中で寄与分を主張して認めてもらう必要があります。

調停では、家庭裁判所の調停委員が話し合いに介入してくれるので、相手と直接話し合いをしているよりは合意がしやすくなります。合意ができたら調停が成立して、その内容に従って寄与分が認められ、その分多く遺産を取得することができます。

調停によっても寄与分についての合意ができない場合には調停は不成立になってしまいます。遺産分割事件の場合には、調停が不成立になると自動的に審判に移行するので、遺産分割審判が行われて、審判によって審判官(裁判官)が寄与分の有無や金額を含めて遺産分割方法を決定してしまいます。

この場合、適切に寄与分の発生原因や内容、計算方法などを主張立証するためには、別途寄与分調停を起こし、寄与分の比率を決めておかなければなりません。これは遺産分割調停や審判とは別の手続きです。

6 まとめ

このように、寄与分の法的なとらえ方は、必ずしも、自分が思っている「貢献」とは一致していない場合があります。こんなに尽くしたのに、不公平だ、と感じた時は、それが寄与分として成り立つのかどうかを一度専門家にご相談してみるのがいいと思います。

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