弁護士が教える、父親でも親権を獲得する方法

父と子

自分は父親だが、どうしても親権をとりたい、と言う相談は近時よく受けます。

親権は男女を問いませんので、母親しかとれないだろう、男親の自分ではとても無理だろう、と最初からあきらめる必要はありません。

しかし、いざ離婚となると、父と母でどちらが子供を育てるのかとなれば、8割から9割は母親が引き取っているのが実情です。日本の社会で父親が親権を取り、子供を養育監護するというのは並大抵の事では不可能です。

まず、日本の労働市場の特徴である長時間労働があります。一体、日本の子持ちのサラリーマンのお父さんのどれくらいが毎日子供と一緒に朝夕食をともにしているでしょうか。

年間100件以上の離婚事件を見てきている当事務所での実感から言って、子供と食事がとれないどころか、子供が寝ている内にでかけ、子供が起きている内に帰れる事はまれ、土日は接待ゴルフ、などという生活を続けているかたが、日本のサラリーマンには大多数です。

それで、「パパ、また来てね」と子供に挨拶されているようでは、とてもとても、父子関係は築けません。

また、時間的に余裕があって、子育てに積極的に関わっていたとしても、対する母親が専業主婦だったりした場合、子育てへの関わり方は時間もエネルギーも桁違いの差が出てしまいますので、最初から勝負になりません。

まして、専業主婦の女性は、多くの場合、社会とのつながりを持ちませんから、自己実現の唯一の対象が子供になってしまいがちです。そうなると、子供を失うことは自分というものの存在価値を失うことになりますから、絶対に手放しません。

また、子供は自分のモノという発想になりがちなので、幼児がきらいになったお友達におもちゃを貸さないのと同じで、面会すらさせないような状況が生まれたりしてきます。

そうなると、妻とは愛情がとっくに無くなっていて、離婚はしたいけれど、子供と暮らせなくなる、あるいは最悪子供に会わせてももらえなくなるのではないか、と言う恐怖から、離婚に踏み出せない、と言う男性はかなりいます。

しかし、それでは、幸せに生きるという、人生の当たり前の目的をあきらめたことになってしまいます。まして、愛情も無い家庭で育つ子供には悪影響しか発生しません。

困難な道ですが、肚を決め、時間をかけて、丁寧に準備していけば、道は開けます。

どうしても子供を育てたいなら、子供を育てられる父親になればいいのです。

以下考えてみましょう。

1 親権とは何か

具体的に対策を練る前に、大前提の知識として、親権とは何かを知っておきましょう。

親権とは、未成年の子供を監護養育したり、代理人として財産管理などの法律行為をする権利や義務をいいます。婚姻中は、夫婦でこの親権を「共同で」行使しますが、離婚後は、どちらか、親権者となった者が「単独で」行使することになります。

一人になってしまうわけですから、お金の多寡とかそう言うことではなく、現実に今日の育児ができるかどうかが問われてくるわけです。

コラム:親権と養育監護嫌悪分離(家制度と新民法の過渡期)

親権のうち、具体的に子供を養育監護する権利義務を特に「養育監護権」と呼ぶことがあり、法的な財産の管理権である親権から、これだけを取り出して親権者ではないほうが養育監護権のみを持つことが行われた時代がありました。

もちろん、子供にとって,双方の権利が分離しているなど不便でしかありませんから、とても、お勧めできる事態ではありません。

しかし、戦後、家制度が崩壊した後、本来、離婚後の親権を誰がもつかは、平等である男女が話し合って決めるべきであるとなったわけですが、まあ、人の心はなかなそう簡単には切り替わりません。

離婚して家を出て行く母親に対して、子供は家のものだ、置いていけ、というような風潮は根強くありました。その妥協策として、親権は父親が持てばいいでしょう。養育監護は母親にさせてあげなさい、というような方便がとられたわけです。

新民法と新憲法の理念が根付くまでの歴史の過渡期として仕方なかったとは言え、古い家制度の悪いところだけが残された結果招いたいびつな解決でした。

裁判所はこの実態への深い反省から、今ではよほどの事が無ければ、親権の中から、養育監護権だけを抜き出して分離するなどということはしません。「育てている人が親権者である」これが大原則です。

2 親権者を決める要素は何か

では、どうやって親権者は決められるのか、判断基準は単純明快です。

前項でいったとおり、「誰が育てているのか」これだけです。

収入の多寡でもなければ、社会的地位でもありません。むろん、男女の性別でもありません。子供を育てているのは誰なのか、これに尽きるのです。

具体的にイメージするために、ここで、まれではありますが、父親が親権者となった事案をいくつかあげてみます。

  1. 母親が、子供を置いて出て行ってしまい、父親が離婚の協議の当初から、離婚まで子育てを事実上行ってきた事案。
  2. 母親が、子供を連れて出て行ったが、その後、犯罪を犯し、収監されてしまい、結局父親の元に子供が帰ってきて、それから父親と暮らしていた場合(最終的には1と同じになったわけです)
  3. 父親が子供を連れて出て行き、子供達の養育監護を充分に行っており、母親の方も連れ戻し等が成功しなかった場合。なお、これと同様の事案で、別居後速やかに母親の方から、子の引き渡しの審判申立があり、結局引き渡す羽目になった事案もありますので、これを拒否して子供を養育することを持続できた場合という限界事案となります。
  4. 母親が子供を連れて出て行ったが、その後、数年にわたり、父親との面会を拒んだ事案。最近地方の家庭裁判所で審判が出ました。面会交流をする事の重大性を無視した親に親権者の資格なしという原則に則った珍しい事案です。

これらを見てくると、かなり厳しい間口の問題だという事がわかります。しかし、上記の成功例を見れば、道が無いわけではないことも確かです。

これと逆に、失敗例を並べますので、さらに反面教師としてイメージしてください。

  • NG1. 自分は忙しいが、自分の母親が田舎から、こちらに移り住んでくれると言っている。母親は、元保母さんもしていたし、子育てはプロである。何の心配もない。

    → 男性の側からよく出される主張ですが、これはNGです。いくらおばあさまがプロでも、当事者ではありません。親権者として見比べられるのは、父と母の子育てへの姿勢です。

  • NG2. 自分の方がお金がある。相手がパートで働くような年収で、とうてい子育てができるわけがない。

    → これも男性の側からよく出される主張です。なるほど、女性と男性で年収差は当然あるのでしょうが、これを調整するのが婚姻費用であり、養育費です。収入の多寡は関係ありません。高収入であればあるほど、婚姻費用や養育費は高額になっていきますから、ますますこの点が問題となることはなくなってくるのです。

3 本当に親権をとりたいのか

ここで、もう一度考えてみてください。

本当に親権を獲りたいと考えていますでしょうか。親権者という肩書きさえ手に入ればいい、育てるのは妻でもかまわない、というような考えを持っているのであれば、それは親権者になる資格すらありません。

子供にとって、実際に養育監護している母親に親権がない、というのはとてもいびつな状態です。何か1つ行為をするたびに、育ててもいない父親に同意をもらいに行かなければならないという状況は、子供にとって、決していいことはありません。

世の中には、父親でも親権を取りたいと言って相談に来る人に、奥さんに養育監護だけをさせて、親権を手放さないという合意をすればいいではないか、というようなめちゃくちゃなアドバイスをする人、あるいは、それを推奨するかのようなサイトがありますが、それは全くナンセンスです。

親権はもともと子供の幸せな生活のためにあります。親の見栄のためにあるのではありません。このことを忘れてはいけません。

子供を育てること、子供を養うこと、これについて、妻には絶対に任せられない、自分がこの子達を育てなければこの子達の人生を保証できない、強い思いがありますか。

泥まみれになっても、どんなに苦労をしても、孤軍奮闘して、子供を育て養っていく覚悟が本当にありますか。

そして、何より、子供達はそんな貴方を選んでくれるのでしょうか。それは、これまでの実績が無ければ到底なしえません。

私はよく、相談に見える男性に、子供との関係はトラブルが発生するまでの関係の、「以上にも以下にもならない、」とお伝えしています。子供との関係が良好で、「子育ては主にパパ」という実績があれば、子供達は何の問題もなく、パパが育てていけます。

しかし、それまで、全く子供の事には無関心で、あまり関わったことがない人が、急に今後心を入れ替えると言っても、実績もありませんし、子供達もついてきてはくれません。

もし、見栄で親権をほしいというのであれば、やめておいた方が身のためです。

しかし、そうではなく、この厳しい現実を見据えても、自分が親権者とならなければ子供達を不幸にする、という強い決意をもって、進んでいけるのであれば、必ず道は開けます。

4 親権を取るにはどうしたらいいか

以上の厳しい現実を踏まえつつも、どうしたら親権がとれるのかを考えてみましょう。

1. とにかく別居する

まず、子育てをしているのが、誰なのか、はっきりさせるためには別居が一番です。

同居していると、どちらが主に育てていたかについては、微妙になってきます。いや、微妙ならまだいいのですが、共働きならともかく、全日勤務の夫は、専業主婦である妻に対しては、子育てのエネルギーも時間も、勝ち目がありません。

勝つには、子供を連れて別居するのが一番の方法です。

但し、ここで注意するのは、別居について、明確な理由を言えることです。

例えば、母親が子供の子育てを放棄する、ネグレクトがある、といったような、子供にとって危機的な状況だから出たのだと言える事が大切です。

気をつけるべきは、妻の悪口をどれほど言っても、親権はとれないということです。

極端を言えば、妻が浮気をしていたとしても、そのことだけで親権は左右されません。浮気に夢中になる余り、子育てを放棄する、などのようにあくまで、子供にとって、この母親ではだめなのだという、理由が必要なのです。

2. 子供の面倒をみるため孤軍奮闘する

もし、子供を連れて別居できるか、あるいは、運良く、母親の方が子供を置いて出ていった、というような展開になったら、チャンスです。このチャンスを生かすためには、できるだけ、子育てに「孤軍」奮闘してください。

保育園や学童保育、ベビーシッターさんを利用する事はかまいませんが、安易に、自分の母親(おばあちゃん)などを呼びつけて、面倒を見させて暢気にしていてはいけません。一生やれといっているのではありません。もちろん、時々おばあちゃんに助けてもらうのはかまいません。

しかし、事件がおちつくまで、必死で、自分の力で、なんとしても育てているという事実はどうしても必要です。

最近は男性の育児休暇も進んできました。一生ではないのですから、有給を取るなりして、できるだけ、子供にかける絶対時間を捻出してください。

3. 専門家に相談する

父親が親権を勝ち取るというのは、本当にイバラの道ですから、案内もなく、サポートもなく、闇雲に進んでも道は開けません。実績のある、経験豊富な弁護士に必ず相談してください。

宣伝している訳ではありませんが、子の監護に関する処分の審判など、全くの素人が誰の助けも無く、戦える場ではありません。裁判所への提出書類、またその際、主張すべきポイントなど、効果的に進めるにはどうしても専門家の力は必用になります。

4. 養育監護ができるお墨付きをもらう

必ず、養育監護権者の指定を求める裁判をおこしてください。

もちろん、最終的に親権をこちらがとるという合意あるいは審判あるいは判決がもらえればそれが究極ですが、まず、それらについてはこれから審理が行われるという段階でも、今誰が育てていくのが妥当かという、指定をしてもらうことは可能です。

そして、多くの場合、養育監護権者として指定を受けた者がそのまま親権者に認定される可能性が高くなります。

5. 面会は許容する

面会については、勇気をもって、これを実施していくしかありません。

母親と子供を面会させたら、いきなり、子供は母親に抱きついて二度とはなれてくれないのではないか、などと心配するなら、もう親権を取りたいだなどと言わないことです。

子供との関係は、トラブルが起こるまでの以上にも以下にもなりません。トラブルが起きてから、いくら母親と会わせないとがんばっても、母親と子供の絆を切ることはできません。自分と子供の絆の方が強く無い限り、かなわないのです。

また、ハーグ条約の調印後、日本の裁判の実態は必ず非監護親(今子供と離れている方の親)と子供は面会させる、と言う方向で動いています。

我が国の現状では、一回目の子供の連れ去りは目をつむりますが、そこから無理矢理奪い返すと、誘拐罪の成立の余地がある、というような運用が行われています。いわば、言い方は悪いですが、最初に拉致した者が勝つ、という原則が続いているのです。

双方代理人が付いていれば、むりやり相手から奪い返せば不利だと言う事はわかりますから、させないように指導するはずです。

それに、大切なのは、非監護親と子供を面会させるというのも、親権者としての重要な度量であるとされていることです。子供と面会する権利は子供のためにあるという、近年の面会への裁判所の考え方の路線と相まって、この点は大きくポイントとなってきています。

勇気をもって、子供と非監護親の面会は実施しましょう。

5 まとめ

困難な道ではありますが、子供との関係が良好であり、絆がしっかりしていれば、また子供のためには、母親がとても親権をもって育てる状況にない、自分の方がふさわしいという、事情がある限り、道は開けます。いい意味でも悪い意味でも、この問題については男女平等なのです。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

弁護士の無料相談実施中!

当サイトの記事をお読み頂いても問題が解決しない場合には弁護士にご相談頂いた方がよい可能性があります。

ご相談は無料ですのでお気軽に弁護士法人DREAMまでお問い合わせください。

03-5577-2844

メール問い合わせ