弁護士が教える、DV夫と安全に離婚する方法

DV被害にあっている状況

いつまで経ってもなくならないドメスティックバイオレンスの被害

 ドメスティックバイオレンス(DV)という言葉が世に知られ、配偶者から暴力を受けている方たちの被害実態に日が当たるようになって、しばらく経ちます。

 しかし、まだまだドメスティックバイオレンス被害にあいながら、誰にも相談できず、一人で悩んでいる人は多く存在しています。社会全体としても、日本的な古い風土、根強い男尊女卑の考え方のもと、「殴られるには殴られるだけの理由があった」などと見当違いの評釈を加えるような輩もおり、暴力に対して断固NOと毅然とした態度を取ることの難しさは今も昔も余り変わっていません。

ドメスティックバイオレンスはなぜいけないのか

 それまで別々に成長してきた男女が、夫婦となって、他人でありながら一緒に暮らすことは様々な意見や風習の違い、軋轢を生みます。そこを一つ一つ歩み寄り譲り合いながら、長い年月と膨大なエネルギーをかけて解決して、よりよい関係を築いていくのが夫婦というものです。

 しかし、暴力は、こういった手間のかかる話し合いをすっ飛ばして、一瞬で物事に結論を生みます。暴力による支配は絶対であり、なにより、簡単なのです。そして一度でも暴力による支配が勝利を収めると、もはやその家庭での最高の価値観は暴力となってしまいます。

受け継がれる負の遺産

 そして、このことは、夫婦のみならず、子供の人格形成にも多大な影響を与えます。たとえば、父が母に暴力を奮っていた家庭で育った男児が長じて、ガールフレンドにデートDVをしてしまったりすると言う話はよく聞きます。また、しかし、もっと深刻なのは、被害者の負の連鎖です。父が母に暴力を振るっている家庭で育った女児が長じて、DVの夫と結婚するという図式が非常に良くあります。

 あれほど嫌な思いをした暴力になぜひきよせられねばならないのか、とても不思議なのですが、結局、DVの被害者は、相当な年月を暴力が絶対価値を持つ家庭で暮らしていますから、根っから暴力に弱く、暴力に対して垣根が低いのです。加害者は敏感にそのにおいを感じ取ります。そして愛情の名の下に暴力を振りかざして来られたときに、暴力以外の正義を知らないから、被害者は戦うべき気力すら持たず、結局は暴力に圧倒されてしまうのです。

 このような世代間を超えた被害の連鎖を防ぐためにも、暴力に屈しないで、今、NOと言って決別し、離婚という清算を勝ち取り、新しい人生を歩むことが絶対に必要なのです。

 そのためにもDVの本質をきちんと理解し、その上で自分の実力を見据え、それに見合った戦い方をマスターして行くことが大切です。異常におびえることはありませんが、男性の力は侮れません油断は大敵です。安全を確保しながら、早期に離婚できる方法をお話しします。

1 ドメスティックバイオレンス(DV)とは何か

(1) DVの定義

 ドメスティックバイオレンス(以下「DV」と略します)とは、配偶者や内縁関係者など、婚姻関係あるいは婚姻関係類似の共同生活を営むあるいは営んでいた関係者の間で起きる家庭内暴力のことを言います。

 直訳だと単なる「家庭内暴力」ですが、これは親の子供への虐待や、子供の家庭内暴力なども入ってしまうので、男女間に限定する意味で、上記のような持って回った言い方になっています。

(2) DVの種類

 バイオレンスという言葉が物語るとおり、まずは暴力を意味しますから、直接身体に加えられる物理的な暴力を指すことが第一義的な意味のDVです。しかし、DVの本質である、力によって相手を支配するという事から考えるならば、物理的な暴力に限らないのはむしろ当然です。

 理論の発展とともに、物理的な暴力以外に、精神的な暴力(いわゆるモラルハラスメント行為類似のもの)、経済的な暴力(生活費を渡さない、仕事を制限する)、性的な暴力(性行為の強要)なども同様にDVとして認定されるに至っています。

DVの種類 具体例
物理的暴力 殴る、蹴る
物を投げる(当たらない方向でも含む)
壁や物品を叩く、壊す
間近で怒鳴る
詰め寄る
etc
精神的暴力 無視する
上から目線で対応する
相手の人格を否定する
etc
経済的暴力 生活費を渡さない
正当な理由も無いのに勤労を認めない
相手の財産を全て管理しようとする

※注意!

 上記はあくまで代表例であり、当然DVはこれだけではありません。くれぐれも、この表に該当するものが無いからと言って「私の場合はDVじゃないんだ」という発想にならないでください。

(3) DVの特徴

i. DVを行う人のイメージ

 もともと、DVの加害者、特に加害男性というのは、だれしも高圧的で、体も大きく、腕力も強く、言葉遣いも乱暴で、いかにも暴力を振るいそうなイメージの人が多かったように思います。

 しかし、近年DVの加害者と言えば、虫も殺さぬような顔をし、意外に体格も華奢でインテリ然として、実際に高学歴高収入の人が多いように思います。新旧DVの違いというところでしょうか。

 そのため、むしろDVはより陰湿化し、密行化し、光を当てにくくなってきたように思います。

 DVを正当化する理屈も上手なので、暴力を振るわれた被害者の方が自分悪いことをしているのだと思わされてしまうのも特徴です。

ii. 男性のDV被害も増加

 上記の新型DVの増加に伴い、女性の側から、男性に加えられるDVも 増えてきました。もちろん、昔から女性が男性にDVを行う例はありましたが、男性側が何とか押さえ込むか、あるいは恥ずかしくて公言しないため、表に出にくかっただけという事だと思います。

 一つ危険なのは、女性は元々腕力がありませんから、暴力を振るうときに多くは得物を用います。自分の手近なところにあるものが多く使われます。キッチンにいるからと言って、しゃもじやお玉ならいいですが、これが包丁となると危険性が桁違いにアップします。このあたりが女性の暴力の恐いところです。

2 DVに対抗する法的手段を利用する

(1) DVを規制する法律

 法は、配偶者の暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成13年制定)によって、これを規制しています。この法律は、その後、平成16年、19年、25年と改正が繰り返され、身体に加えられる暴力だけでなく、精神的な暴力も加えたり、対象を婚姻関係以外にも広げたりと、あらたに社会問題となるケースへの対応を探ってきています。

 この法の規制の目玉と言えるのが、保護命令で、詳細は後述しますが、被害者に近づいては成らないとする「接近禁止命令」、自宅から退去を命じる「退去命令」、子供に近づく事を禁止する「子に対する接近禁止命令」がその内容となっています。状況に応じて、これらの手段を駆使しながら、安全を勝ち取っていく事が必要です。

(2) 警察の対応

 警察のDVに対する対応は、埼玉の桶川ストーカー事件への苦い経験から、舵取りが大きく変わりました。今は暴力を検知すると、全件身柄主義(とにかく容疑者を全て逮捕してしまうこと)で望んでいます。そのため、悩んで準備を始め、別居の為のXデーの準備を進めていたところ、いきなり暴力により、警察が出動し、結果夫が逮捕され、全てなし崩しで解決ができてしまったというような事案もあります。

 警察はあくまで、犯罪の検挙と犯罪の防止を目的としているため、当初の暴力が、より大きな犯罪の呼び水になる事を恐れて、全件身柄事件としますし、必要があれば、保護命令の取得も推奨します。まさに時代は変わったとしか言いようがありません。

(3) その他の機関

i. 配偶者暴力相談支援センター

 婦人相談所や福祉事務所等です。

 このような機関で、被害者へのカウンセリンや一時的な保護、各種情報の提供等を行ってくれます。

 ただし、都道府県によって、配偶者暴力相談支援センターに指定されている相談所等が異なるので、インターネット等で確認しておきましょう。

ii. シェルター

 DVの被害者が緊急に避難できる、民間が運営している施設のことです。

 被害者への相談、自立に向けた支援などを行うところもありますが、どの ようなことをしてくれるのか、入居するためにどのような条件が必要か、入居した後はどのようなルールがあるのは当然施設ごとに異なります。

 施設の性質上、住所含め公にはあまり情報が明らかになっていないことも多いので、実際はどうなのか分からない点も多いので、いざというときの選択肢の一つ、くらいに捉えておいた方が良いでしょう。

3 DV夫(妻)との離婚を進めるための準備

(1) DVの証拠を集める

  1. 録音、録画
  2.  日常的にDVを行うような人間であれば、例えば相手が帰宅した時間を見計らって、相手と一緒にいる部屋(リビングやダイニングルーム、寝室等)でicレコーダーやビデオ、携帯電話等を秘密裏にセットし、録音、録画を始めれば、その瞬間が録音、録画できるかもしれません。

     もちろん、そのような事態になどならないことが一番ですので、あえて挑発してDVを誘発するのはよくないですし(もちろん、だからと言ってDVが許されるわけではありませんが)、あくまで最悪の事態が起きた時にせめて証拠を残しておく、というくらいの意識でいるべきでしょう。

  3. 警察の記録
  4.  DV事件が起き、110番通報して警察官が来てくれたのであれば、警察はその時の状況を報告書や110番処理票等の書面でまとめます。

     その書面の写しを、被害者はもらえる場合があるので、来てくれた警察官の警察署に後日相談に行き、当日の状況を記録した書面が無いか、またその書面の写しをもらえないか詳しく相談してみると良いでしょう。

  5. 医者の診断書
  6.  DVで怪我をした場合、すぐに医者に行くことはもちろんですが、その際必ず診断書を書いてもらいましょう。

     具体的には、どのような状況下でけがをしたのか詳しく医師に説明し、それを診断書に書いてもらうことが重要です。そうした診断書も証拠になります。

     ただし、診断書は、怪我の事実は証明できますが、何が原因で怪我をしたかは上記の通り診察に来た人の説明に基づくので、客観性に欠けると判断される場合もあるので、あまり期待しすぎない方が良く、できれば他の証拠もそろえた方がいいでしょう。

  7. 写真
  8.  まず、ご自身について、DVで怪我をしたときは、なるべく早く写真に収めましょう。怪我は時とともに治ったりして変化していきます。

     また、ご自身に限らず、例えば相手が壊した壁や家具や物品の写真だとか、異様に散乱した部屋の写真等も、DVを推認させる証拠になります。

  9. メール、手紙(メモ)
  10.  これは主に精神的暴力や経済的暴力について証拠になる場合があります。

     例えば相手からの心無い内容のメールや手紙(チラシの裏に書いた置手紙等含む)だとか、「○○時までに○○をやっておけ。でないとひどいぞ」と言ったように上から目線だったり脅したりするような内容のものも当たります。

     経済的暴力については「○○をしないと生活費は渡さない」だとか、「今月は○○円だけでやり繰りしろ」などと無茶な要求をしてくるメール等があたります。

     また、「また殴られたくなかったら○○しろ(or ○○するな)」などと言ったような、かつて暴力を振るったことを認めるようなメールであれば物理的暴力の証拠にもなります。

(2) 「助かりたい!」という強い意志を持つ

 DV事案において、一番の重要ポイントがこれです。

 本人に助かりたいという強固な意志がないと、どんなに策を弄しても解決はできません。

 DVは必ず暴力期と、ハネムーン期という二つの波の間を繰り返します。愛情をかざした暴力によって、剛柔両方から絡め取られてしまうのです。二度とその手には乗らないという強い意志が必要です。

また、逆説的ではありますが、DVは被害者がいないと成立しません。相手に少しでも愛情があるなら、自分が去ることによって、相手方に非人間的な暴力行為を辞めさせることができるのだという認識をきちんと持つことも必要です。

(3) とにかく縁を切るという事に集中する

 暴力の立証ができなくても、とにかく別居して年数を稼いでいれば、いずれ離婚は勝ち取れます。

 慰謝料が取れなくても、自分で仕事して金銭は稼げばいい。それでもいいから、最終的には縁を切ることを目的として行く、という割り切りも必要です。

 争いに決着がつかず、いつまでも縁を切れずにずるずると交渉や裁判を続け、身体、精神を病んで行くことに比べれば、金銭的なことは、まだ将来取り返しがつきます。

 本当に大切な物を見誤り、相手と無駄な交渉を続けると、相手につけ込まれる事が多々あります。DVの加害者は狡猾だという事を忘れてはいけません。

(4) 当面の資金の確保をする(兵糧攻めへの対抗)

 DVの被害者は、加害者に強要されて専業主婦でいることを命じられたりしているケースが多く、十分な経済力を持っていません。そのため、相手と離れることによって生活できなくなること、つまり経済的に封鎖される怖さで、一歩も動けない、つまり別居したり弁護士に相談したり、法的手段に訴えたりすることができないことが多いのです。

 まずは当面の資金の確保が必要です。法的には婚姻費用という生活費を裁判で求めることができますが、結論が出て支払いが始まるまでには何ヶ月かかかります。

 一旦はご親族に援助をもとめるとか、手元に持ち出せるお金があれば、これを持ち出すしかありません。当然相手方は返せと言うでしょうが、それは、財産分与で清算すると言って、堂々としていることも必要です。

4 実際の戦い方

(1) まず弁護士に相談

 最近ではDVについて書かれた本やインターネットの記事がいろいろありますが、中には不正確なものもありますし、しかもDVは、100人被害者がいれば100通りのDV、100通りの解決方法があるわけですから、本やネットに書かれた解決策があなたにとってベストであるとは限りません。

 特に(2)で述べる別居は、タイミングややり方を間違えると、さらなる暴力を振るわれたり、結局相手に懐柔されて元の生活に戻ってしまう等、とんでもない事態になってしまいます。

 まずは信頼できる弁護士に相談に行き、あなたの事情を詳しく説明し、事情に適した、今後の対応を慎重に検討しましょう。

 弁護士への相談を勧めると、宣伝のように思われますが、こういった問題に本当に法の専門家として、正しい知識と正しい職責をもとに、法廷までを視野に入れて堂々と戦えるのは弁護士しかいません。変なところで遠慮をして、職責を持たない、正しい知識を持たないところに相談したが為に、無為に時を過ごしたり、絡め取られて精神を病んだりと、取り返しの付かない遠回りをしてきた案件を山ほど見てきました。離婚、特にDVへの対応の経験豊富な弁護士に相談する事は本当に必須なのです。

(2) 一刻も早く別居する

 なるべく早く物理的に相手の支配下から逃れることです。別居することはDVを解決する上で必須のことであり、これを無事にこなせるかどうかが第一関門になります。

 以下のURLで別居の方法、注意点について詳しくまとめてありますので、参考にしてください。

離婚で後悔しないために、知っておくべき「別居」のポイント

(3) 保護命令の申立

 保護命令とは、地方裁判所が相手に対して出す「接近禁止命令」等のことで、以下のような内容の命令が下されます。

  • 被害者への接近禁止命令
  • 電話等の禁止命令
  • 被害者と同居する子供への接近禁止命令
  • DV被害者の親族等への接近禁止命令
  • DV被害者が住んでいた住居からの退去命令

 どのような種類の命令が下さるかは場合によりけりで、被害者本人しか申し立てられませんが。命令に違反すれば刑事罰(1年以下の懲役または100万円以下の罰金)が加害者に下されるので、加害者に対する抑止力となります。

(4) 離婚調停の申立

 離婚するにはいくつか方法があり、大きく分けて、協議で離婚する、調停で離婚する、訴訟(判決)で離婚する、の3つがあります。

 多くの場合、DVを行うような人間とまともな離婚協議などできないでしょうから、協議離婚は期待薄です。なるべく早く離婚調停を申し立てることが必要です。

 調停とは、裁判所で行われる話合いの手続きで、「調停委員」という裁判所の非常勤の職員(男女1名ずつ)が間に入って話し合いをまとめてくれる手続きです。いきなり離婚の訴訟を提起して判決を貰いたい方もいると思いますが、法律上はまずこの調停で話合いを進め、この話合いが決裂した場合に初めて離婚訴訟が提起できるのです。

 ただ、この調停委員は、法的な見地や豊富な経験からアドバイスしてくれたり相手を説得してれる場合もあるので、離婚に向けて建設的な話合いが期待できます。

 また、調停は基本的に相手と同席することは無く、交代交代で調停の部屋に呼ばれるほか、待合室も別々ですので、その点は安心できます。

 以下のURLで調停について詳しい説明をしておりますので、参照してみてください。

弁護士が教える、離婚調停の進め方

5 まとめ

 DVを巡る問題は、如何に正当化しようと、DVが決して許されるものではないのだ、という毅然とした態度がまず解決の為には必要です。

 法律は過去の苦い経験や暗黒の時代への反省から、現在いくつもの保護手段を設けています。

 専門家の指導を得ながら、これらを駆使することにより、必ず道は開けます。

 まずは一歩を進めてみてください。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

弁護士の無料相談実施中!

当サイトの記事をお読み頂いても問題が解決しない場合には弁護士にご相談頂いた方がよい可能性があります。

ご相談は無料ですのでお気軽に弁護士法人DREAMまでお問い合わせください。

03-5577-2844

メール問い合わせ