弁護士が教える、モラルハラスメント夫と離婚する方法

モラハラに悩む女性

 最近、有名タレントの離婚をきっかけに、にわかに取りざたされてきたのが、このモラルハラスメントです。以下モラハラと言います。

 モラハラは、物理的な暴力を伴わないことから、加害者にも被害者にも、意外に自覚がなく、「夫婦関係なんて、そんなもの」とあきらめて、何年も何十年もすぎてしまっている夫婦が多かったりします。
しかし、人間が他の人間を力で否定し、従わせるというのは、物理的な力のあるなしに限らず、絶対に許されることではありません。

 しかも、モラハラは、人間の人格を否定し、個人の尊厳と自我を破壊することから、被害者は、自分で考える力を失っていることがほとんどです。それどころか、自分には何もできない、自分には生きている価値も無い、そこまで追い詰められてしまうことも多々あります。

 もし、自分の夫がモラハラではないかと被害の心当たりがあるなら、一時もその被害状況に甘んじていてはいけません。

 とらわれてしまっている檻から抜け出て、本当の人生を歩む道を見つけましょう。

1 まずは、モラルハラスメントについて知っておこう

(1) モラルハラスメントとは何か

 モラルハラスメントとは、精神的な(モラル)嫌がらせ(ハラスメント)を言います。
物理的な暴力にいたらない点で、ドメスティックバイオレンスとは異なりますが、多くの場合はドメスティックバイオレンスに進んでいく可能性が高いと言えます。

 もともとフランスの精神科医が提唱したもので、原因は自己愛性の人格障害にあると言われています。障害というだけあって、モラルハラスメントの加害者は、自分しか愛さない、他人の事に興味が無い、それが講じて、最も近いところにいる配偶者や家族の人格を否定する。権力下に置こうとする、という方向に行動します。

 自己愛の裏返しとして、他人からはよく見られたいという衝動が強いので、世間体はとても気にしますし、対外的な人当たりはよく、言い訳も嘘もうまいという特徴があります。

(2) モラルハラスメント行為の実際

 以前、私は、あるテレビ番組で、モラルハラスメントへの評釈を求められ、「日本の男性はほぼほぼこれですよ」と発言してしまい、物議を醸したことがありましたが、これは決して大げさな言い方ではありません。

 モラルハラスメント被害が表沙汰になりにくいのは、もともと日本の男性の多くがおおむねこういった性状をもっているからなのです。下記の典型行為を、何気なく日常的に受け入れてしまっているような事があるのであれば、それはモラハラ被害であることを認識してください。

 典型的なモラルハラスメント行為と言われるものは次のとおりです。

  1. 無視する
  2.  ある日突然、些細なきっかけで、無視が始まります。口をきかない、顔を合わせない、これが何日も何週間も続くことがあります。被害を受けた方はまじめであればあるほど、「何かいけない事をしたのではないか」と思い悩み追い詰められていきます。

  3. 上から目線で対応する
  4.  言葉遣いや、態度が全て上から目線の高圧的なものになります。相手の呼び方を「お前」と呼ぶようになり、「〇〇しろ」「〇〇しておけ」というような言葉遣いが日常となります。

  5. 相手の人格を否定する
  6. 「お前なんかにできるわけが無い」

    「お前は何をやってもだめだ」

    「なんてくだらない奴なんだ」

    「俺の言う事を黙って聞いておけばいい」

     などなど、相手の人格を徹底的に否定する発言がなされます。相手に限らず、相手の親族をも「お前の家族は皆狂っている」など、相手の出自全体をおとしめるような発言が平気でなされます。

典型的な行為は上記のとおりですが、イメージ的にもっと分かりやすくした例えがあります。

 「〇〇という本を読んだか」という問いがなされたとします。

 あなたが「読んでない」と答えると、「読んでないのか、だからお前はバカなんだ、何で読まないんだ」という攻撃があります。

 しかし、「読んだ」と答えたとすると、今度は「なんでそんなくだらない本を読むんだ、だからお前はバカなんだ、時間の無駄だろう」という攻撃になるのです。非常にわかりやすい例えですが、要するに、モラハラ夫は、この本の内容に興味があるのではありません。この本を使って、相手の人格をどう貶められるかにだけ興味があるのです。

 あなたの夫はいかがでしょうか。

2 モラルハラスメント夫と離婚するためになすべき事

(1) 証拠をできるだけ集める

 モラハラ夫は、とても対外的には人当たりが良く、知的水準も高く、それなりに社会的にも成功している人が多いため、そのような行為をする人であると思われていないことが多いという特徴があります。

 また、モラルハラスメント行為は、家庭という密室で1対1で行われることが多いため、証拠を残しにくいという宿命があります。

 将来、離婚の裁判となった際、相手がこちらの言うことを認めず争いになった場合は、証拠がないと、なかなか裁判所もモラルハラスメントの事実を認めてくれません。相手もモラルハラスメントをするような人間ですから、おとなしく「はい、妻の言うとおりです」などと認めるわけはありません。

 したがって、いかにモラルハラスメントの事実を裏付ける証拠があるかが重要なカギとなります。

 日頃から、録音をするとか、問題のあるメールを残しておくとか、できるだけ、客観的に残るものを集めてください。

(2) 財産や、収入など、経済的な部分の情報を手に入れる

 離婚する際は、財産分与、つまり夫婦の共有財産を分ける必要があります。その際、妻側は、夫名義または夫が所有している具体的な財産の存在を立証しなくてはなりません。

 また別居した場合、離婚するまでの間は双方の年収額に応じた婚姻費用(生活費のことです)を支払ってもらう必要がありますが、その場合も妻は、夫の具体的な年収額を立証しなくてはなりません。

 しかし、モラハラ夫の特徴として、お金には非常に執着するという傾向があります。自分のお金は自分のお金、人のお金も自分のお金、という考え方です。

 そのため、争った相手には一円でも渡さないですむように徹底的に抗戦してきます。

 常日頃も、自分の財産を隠す傾向があるので、争いが始まる前に、少しづつでも、財産の状況を探っておく必要があります。不動産の情報や、預貯金の現状、保険、株などの状況を把握するように努めなければなりません。たとえば、金融機関から通知などは来ていないか、証券会社からお知らせなどは来ていないか、郵便物のチェックもさることながら、家の中でもそういった書類を置いてありそうな場所は、常日頃気をつけて探しておくべきです。

(3) 心構え:自分の関係者へ自分の悪口を言われることを覚悟する

 モラハラ夫の特徴として、対外的には人当たりがいいという事も指摘しました。それを利用して、妻の人間関係に切り込み、妻が如何に酷い女房であったか、それによって、自分がどれほど被害にあっていたか、を妻の友人、親族、会社関係者などに、被害者然としてどんどん触れ回られる事があります。

 夫を24時間見張ることは不可能ですし、どこに触れ回るか予想もつきませんので、これを完全に阻止することは不可能です。

 しかし、それで加害者の言を信じて自分から離れるような人間関係であれば、今離れられて良かったと思うことです。そう割り切る強さがないと、乗り越えていけません。真の友人は「奥さんの事をそんな風に言うなんて、貴方がおかしいんじゃ無いの?」と抗議してくれるはずです。そうした人間関係だけが必ず残っていきます。

3 モラハラ夫と離婚するための方法

(1) まず弁護士に相談する

 何よりも大切なのは、自分だけで悩まないことです。

 特に、モラハラ事案は、被害にあっている期間が長いこと、その間ずっと加害者から自我や尊厳を否定されてしまっているため、被害者は、自分の思考力を失い、自分自身の価値を否定しかねないところまで追い詰められてしまっています。これを自分だけの力で打破するのは非常に厳しいことです。

 また、離婚を考えているのであれば、次に述べる別居のタイミングやそれまでにしておくことなどを踏まえ、長い目で計画をたて、合理的に行動するためのアドバイスをし、ともに戦ってくれる代理人の存在は必須です。

 ですから、まず、専門家である弁護士に相談する事をお勧めします。このように書くと、まるで宣伝行為のように思われるかも知れませんが、私の経験から言わせて頂きますと、例えば「夫が」用意した離婚カウンセラーに相談してしまい、何ら問題無いと言われて、あきらめてしまったり、法律の専門家では無い方に相談して、見当外れなアドバイスを受けてしまい、年単位の時を無駄にしてしまった方は本当にたくさんおられます。その無駄にした年月、モラハラの被害を受け続けているわけですから、人生の損失は取り返しのつかないものになります。

 是非、弁護士に、それも離婚事件の経験豊富な弁護士に相談されることをお勧めします。

(2) 別居する

 モラハラ事案は、先述したように、証拠を取りにくいという傾向があります。離婚したくても、明確な離婚原因を立証できない事が多々あるわけです。そうなってくると、夫が離婚に同意しない以上、裁判で離婚を認めてもらうためには一定程度の別居はどうしても必要になります。そうなったら、1日も早く、別居年数のカウントダウンを開始した方がいいに決まっています。

 さらには、別居することによって、モラハラ夫の妻への権力的な影響が無くなりますから、被害者の状況に甘んじてきた妻も、一人になると、自分の頭で物を考える事ができるようになるというメリットもあります。その意味でも、一刻も早い別居は必須なのです。

 夫婦の片方が片方の人格を踏みにじり、抑圧しているような状況を1日でも続けていいわけはなく、この状況を打破しない限り、不幸は続きます。別居することの必要性は他の事案以上だと言えます。

(3) 離婚調停などの法的な手段を利用する

 モラハラ夫は、上記のとおり、財産にも執着が強いですし、何よりも自己愛が強いので、自分を否定する離婚には絶対に応じません。ぎりぎり最後に離婚に応じるとしても、自分が悪いのではなく、とんでもない女房に引っかかった自分は悲劇の主人公であり、とにかく、自分に落ち度は無いが、相手が悪いので、離婚するのだという大義名分にこだわります。

 こうなってくると、話し合いだけで解決するのは元々難しい事案だと言えましょう。

 そうなのであれば、無駄に当事者だけの交渉を続けるより、できれば早期に離婚調停を申し立て、法の土俵の上に引きずり出した方が、話し合いも円滑に進みます。

 モラルハラスメント夫の特徴として、「人当たりは良いが権威には弱い」という特徴が災いして、公の場ではめちゃくちゃな事を言いにくいという傾向にあるからです。

 また、妻に生活費を渡さない等、“兵糧攻め”にしてくることも往々にしてありますから、別居したら早期に婚姻費用の分担請求調停を出して、軍資金を確保しておくことも必要です。そのためにも法の土俵に載ることは大いにメリットがあるのです。

4 まとめ

 以上見てきましたが、何より大切なのは、モラハラ夫によって、自分の置かれている状況が「客観的に」異常であるという認識をもつこと、そして「これは打破しなければならない」状況である、という危機感と強い覚悟をもつことです。

 そのためには、自分を客観的に見てアドバイスをしてくれ、さらに、ともに戦ってくれる弁護士という存在は必須であると言えます。

 しかし、そうした強い覚悟を持ち、この記事で書かれていることをしっかり実践すれば、必ず道は開けます。

 是非とも勇気ある一歩を踏み出してください。

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