“無効”とされないための正しい遺言書の作り方

正しい遺言書の書き方

子孫を無用の相続トラブルに巻き込まないため、遺言書を作っておくことは大切です。しかし、遺言が現実となる時、遺言者はもう亡くなっているわけですから、仮に不明確な記載があっても「これは本当にあなたが書いたのですか」と聞き直すことができません。そのため、遺言書には厳格な要式が決められています。これを守らないと無効となってしまうこともあります。

また、遺言書にはいくつかの種類があり、どのタイプの遺言書を選べば良いか、迷ってしまうこともあるでしょう。

今回は、正しい遺言書の作り方をご説明します。

1 遺言書を書く目的

そもそも、遺言書とはどのようなもので、何のために書くものなのでしょうか?

遺言書とは、遺言者の最終の意思を明らかにするための書面です。
典型的なものは、自分の死後の財産処分方法を明確にする目的のものですが、それ以外にも、遺言書によって子どもを認知したり相続人を廃除したりすることなどができます。たとえば、自分が生きている間に子どもの認知をすると周囲とトラブルになるおそれがあるので、遺言によって認知をする人などもいます。

また、遺言書があると、自分の死後に相続人らが遺産争いをすることを避けやすくなるメリットが大きいです。

遺言書がないと、相続人らは、全員が集まって遺産分割協議をすることにより、遺産の分け方を決めなければなりませんが、このとき、相続人同士の意見が合わずに遺産トラブルが起こることが非常に多いです。

これに対し、遺言書があると、遺言書の内容にしたがって遺産相続が行われるので、相続人らが自分たちで遺産分割協議をする必要がなくなるので、遺産トラブルが起こりにくくなります。

このように、多くの人が遺産争いを避ける目的で遺言書を書いています。

2 遺言書がないとどうなるか

遺言書がないと、具体的にはどのようなトラブルが起こってしまうのでしょうか?

たとえば、母がすでに死亡しており、その後父親がなくなって兄弟3人が相続するケースを考えてみましょう。

相続トラブル例

このとき、長男は、「自分が実家を継ぐので遺産を全部相続すべきだ。もちろん先祖から伝わる大切な不動産は自分が守っていく。」と主張します。次男は「実家の不動産は要らないから、売却して現金で分けたい。3人で平等に分けよう。」と主張します。長女は「私は永年父の介護をしてきたから、自分の相続分を最も多くすべきだ。」と主張します。

このように、それぞれが自分の主張をするので、まったく折り合いがつきません。

話合いができないために家庭裁判所で遺産分割調停や審判が起こり、相続問題の解決までには何年もかかってしまいます。また、長年にわたる争いのせいで、兄弟仲が完全に破壊されてしまい、お互いが心から憎しみ合って一生涯絶縁状態になってしまったりします。

このような問題は、遺言書を書くことによって避けることができます。

3 遺言書の書き方

遺言書を書くと相続トラブルを避けることができるとは言っても、遺言書には厳格な要式があるので、様式に従った書き方をしないと無効になってしまいます。そして、遺言書には、代表的なものとして自筆証書遺言と公正証書遺言があります。

自筆証書遺言とは、遺言者が全文自筆で書くタイプの遺言書のことで、公正証書遺言は、公証人に公正証書の形で書いてもらう遺言書のことです。

遺言書の書き方は、上記2つの遺言書の種類によって異なるので、以下ではそれぞれの遺言書についての正しい書き方を順番にご説明します。

(1) 自筆証書遺言の書き方

まずは、自筆証書遺言の書き方を見てみましょう。

自筆証書遺言サンプル

自筆証書遺言サンプル

  • 全文自筆で書く

    自筆証書遺言で最もと言っていい重要なことは、「全文自筆で書く」ことです。上のサンプルは見栄えを重視してパソコンで作成しておりますが、パソコンを使ったり代書を頼んだりしてはいけません。一部でもパソコンや代書の部分があると、それだけで全体が無効になります。

    たとえば、遺産目録の部分は自筆で書くのが煩雑ですし、パソコンで作成しても問題ないだろうと考えるかもしれませんが、遺産目録でさえも自筆で書かなければなりません。手が震えるなどの事情があって、自筆で遺言書を書けない場合には、自筆証書遺言を作成することができないことになります。

  • 確実に日付を入れる

    遺言を作成する際には日付を入れることも必要です。「〇年〇月〇日」まで特定しなければなりません。ときどき、「〇月吉日」などと書き入れる人がいますが、それだけで自筆証書遺言が無効になってしまいます。また、日付用のスタンプ印などを使ってもいけません。日付の部分も自筆で書く必要があるので、注意が必要です。

  • 加除訂正方法に注意する

    自筆証書遺言では、加除訂正をする際にも注意が必要です。遺言の加除訂正方法は、民法によって定められています。

    たとえば、削除するときには、削除する部分を2重線で消してその横に押印して、欄外に「〇行〇〇文字削除」と書いて署名します。

    加除訂正方法を間違うと、遺言書全体が無効になってしまうので、正しく行う自信がない場合には遺言書全体を作り直すことも1つの方法です。

  • 遺産内容を特定する

    さらに、遺産の内容を正しく特定することも重要です。

    たとえば不動産の場合には、登記事項証明書の表題部をそのまま引き写す必要があります。「実家を相続させる」などと書いても不動産を特定したことにはならないので、注意が必要です。

    預貯金を記載する場合にも、銀行名と支店名、口座の種別、口座番号、口座名義人を全部記載しなければなりません。

  • 複数枚にわたる場合には契印する

    遺言書が複数枚にわたる場合には、ページとページの間に契印をする必要があります。

  • 署名押印を忘れない

    さらに、最後に署名押印をすることも忘れてはなりません。いくらがんばって全文自筆で遺言書を書き上げても、署名押印がないと無効になってしまいます。

    押印に使う印鑑は実印ではなくても有効ですが、後に遺言書が偽物だと言われて相続人間で争いが起こらないように、実印で押印しておく方が安心でしょう。

(2) 公正証書遺言の書き方

次に、公正証書遺言の書き方をご説明します。

公正証書遺言表紙例

遺言公正証書表紙例

公正証書遺言の場合、遺言内容さえ決めておけば、遺言書の作成自体は公証人がしてくれます。そこで、「書き方」についてはさほど意識する必要はありませんし、無効にもなりにくいです。

公正証書遺言を作成したい場合、どのような遺言内容にするかを決めて、公証役場に申込みをします。すると、必要書類を揃えるように言われるので、定められた日に必要書類と印鑑、身分証明書を持参して費用を支払ったら、公正証書遺言を作成してもらうことができます。

4 遺言書が無効かどうかが争いになることも!

遺言書を作成した場合であっても、必ずしも相続トラブルを避けられるとは限りません。遺言書が無効であると主張されて争いが起こることがあります。

特に自筆証書遺言の場合、第三者が偽造したり変造したりすることが容易なので、遺言内容が不利になっている相続人が「偽物だ」と主張して争いが発生することが多いです。

この場合、遺言無効確認調停や遺言無効確認訴訟などが起こって、遺言書の有効無効を確認するためだけに数年がかかってしまうこともあります。当然、相続人間の関係も壊れてしまいます。

このような遺言書の有効性にまつわるトラブルを避けるためには、遺言書の種類の選び方に注意すると良いです。

つまり、自筆証書遺言よりも公正証書遺言を利用すると、遺言書が無効だと言われるリスクが減ります。

公正証書遺言の場合、公証人が適正な方法で遺言書を作成するので、そもそも要式違反で遺言書が無効になる可能性がほとんどありませんし、遺言書の原本が公証役場において保管されるので、第三者による偽造や変造のおそれもありません。

そこで、公正証書遺言が出てきたら、自分にとって不利な内容になっていても、相続人は無効を争わずに受け入れることが多いです。

確かに、公正証書遺言であっても100%相続争いを避けられるわけではありませんが、遺言書によって相続トラブルを避けるためには大変有効な手段です。

今、遺言書の作成を考えられている方には、公正証書遺言の作成を是非ともおすすめいたします。

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