離婚による財産分与、いったい何はもらえて何はもらえないの

財産分与

ある程度の婚姻年数を経過し、離婚することになった場合、夫婦の収入のピークは過ぎ去り、今まで貯めた財産で、今後は生活していくような時期を夫婦は迎えていることが少なくありません。

しかし、離婚となると、もはや二人で一緒に生きていくことはできないのですから、これまでためてきた財産を分けないといけません。ただ、財産と言っても、不動産や、現金、預貯金、生命保険に、有価証券、退職金、等々、いろいろな種類があり、また、ローンがあったり、借金があったりした場合、いったい、何をどう分与してもらえるのか、さっぱりわからなくなってきてしまいます。

でも、財産分与は離婚後の生活を支える基盤ともなるものです。これまでの婚姻生活で、築いたものは正しく分与を受ける権利があります。

この財産分与ですが、慰謝料や養育費に比べると、それほど有名ではないので、知らない人もいっぱいいます。

しかし、財産分与は基本的に夫婦の財産をすべて平等に分けるものですから、場合によっては数千万円単位になることも珍しくありません。

仮に夫婦のの総財産が2000万円だとして、その1/2の1000万円があなたに分与されるとしたら、原則的に一括で1000万円があなたの手元に入ります。

とはいえ1000万円というお金を急に言われてもイメージがわきにくいかもしれませんが、仮にこれが年収だとすると、月額で80万円以上のお金をもらえるのと同じで、慰謝料や養育費に比べるとかなり大きなお金です、しかも贈与税はかかりません。

離婚に関わるお金の問題ではある意味一番重要と言っても良いでしょう。

何と何が、どのように分与されるのか、正しく把握して、離婚後の生活設計を立てましょう。

1 財産分与とは

(1) 財産分与とは

財産分与とは、離婚するときに、夫婦の財産をお互いに分け合う、という制度です。
結婚中に夫婦が築いた財産であれば、誰の名義でも構いません。夫名義であろうと、妻名義であろうと基本的には全てを平等に分けます。

たとえば、結婚後二人で購入した自宅が、100パーセント夫名義であろうと、夫90:妻10の共有名義であろうと、いずれも分与対象財産となります。子供名義の貯蓄であっても同様です。

そして、築いた財産にはプラスの財産もマイナスの財産も含まれます。つまり借金などです。

例えば夫が預金1000万円持っていたとしても、借金が500万円ある場合、夫には財産がプラスマイナスで500万円しかない、つまり分与すべきなのは500万円。このようにして計算します。

イメージとしては、夫婦が築いた財産をプラスであろうが、マイナスであろうがすべてお盆に盛り、でこぼこをならして、残ったものを二人で分ける、と思ってもらえればいいと思います。

(2) どうやって分けるのか

後で詳しく述べますが、財産分与は、夫婦で築いた財産は全て分与の対象になります。
しかし、あらゆる財産を一つ一つ、1/2にして分けるとは限りません。

離婚後に互いに保有する財産が平等になりさえすれば、どういう分け方をしようと自由なのです。

たとえば、夫には預金700万円、時価1000万円の不動産(ローン無)があり、妻には預金300万円があるとします。
この場合、預金口座を全て解約して現金にして1/2に分け、不動産も売却して現金化してそれを1/2に分けても良いですが、不動産は売らずに夫が持つことにし、妻には時価の半分の500万円渡し、預金については、夫と妻の差が400万円なので、その1/2の200万円を渡しても良いのです。
夫は妻に現金700万円を支払って、つまり預金を全て支払って、時価1000万円の不動産を得ることになりますから、離婚後の財産は1000万円です。
他方、妻は自分の預金300万円と夫から貰った700万円を合わせて1000万円を持つことになりますから、互いに離婚後の財産が平等になりました。

少し複雑な話なので、よろしければ以下の動画もご参考ください。

2 どのような財産が分与の対象になるのか

(1) 分与されるもの

財産とは経済的な価値がある物を言いますから、価値がある物は基本的にすべて対象になります。

夫婦が共同で築いた財産はすべて分与対象財産となります。名義の如何を問いません。原則、結婚後に築いた財産はすべて分与対象財産であると思ってください。具体的には以下のようなものが代表例です。

①不動産
土地や建物のことです

②預貯金
普通預金も定期預金も全て含みます。

③証券
株式や投資信託です。

④生命保険
解約したら解約返戻金がもらえるタイプの生命保険です。掛け捨ての保険は対象外です。

⑤自動車
これも、まだ価値がある自動車であれば財産分与の対象になります。

⑥退職金
後で詳しく述べますが、勤め先から将来支払われる退職金も財産分与の対象になります。

(2) もらえないもの

夫婦の財産は基本的にすべて分け合いますが、例外があります。

これは特有財産と言われるものです。

たとえば、婚姻前から持っていた財産です。独身時代にためたお金とか、結婚期間中ではあっても、親の遺産相続でもらった財産などがこれにあたります。

しかし、実際のところ、お金に色がないことから、独身時代に持っていたお金にしろ、相続でもらったお金にしろ、夫婦が生活していく資金のところに混じり込んでしまって相当年数が経っている場合には、減ったり増えたりする資産の中で、特有性を保ち続けられるのか難しい問題も出てきます。このあたりの微妙な問題はこのサイトの別の項目「離婚よる財産分与、いったい何はもらえて、何はもらえないの」を参照ください。

3 基準時

財産分与においては、「基準時」というものが重要になります。

人の財産というのは時間の経過とともに変化していきます。今日100万円あった預金が1か月後には50万円になっているかもしれませんし、逆に200万円に増えているかもしれません。

では、財産分与において分ける財産とは、いつの時点を基準に捉えるのか、ということが問題になります。これが「基準時」という問題です。

結論から言うと、

  • 別居中の夫婦=別居時点
  • 別居していない夫婦=離婚時

が基準時です。

この基準時に存在した財産が財産分与の対象になります。

これは、財産分与の性質を考えてみるとわかります。財産分与は夫婦で共同で築いた財産の分与です。たとえ、夫が働いて、その結果としてえることになっている退職金であっても、それは妻が家事を行い、子供を育て、その内助の功があって、えられるものです。共働きについても同じです。双方が助け合って生活しているからこそ、どちらも働いていけるのです。

そうなると、財産分与の基準時というのは、当然、こういった協力関係が切れた時を言います。基本は離婚時ですが、離婚の前に別居が始まれば、当然日常生活の中でのこういった協力関係は切れます。

財産分与は別居時(あるいは離婚時)に存在した財産を離婚に際して分与する制度なのです。

4 離婚後の財産分与

財産分与は、通常離婚と同時に決めることが多いですが、法律上、離婚後2年以内であればいつでも請求できます。

逆に言えば、離婚してから財産分与を請求する場合、離婚してから2年以上経ってしまうと請求できなくなってしまうので注意が必要です。

5 各種財産の分与において注意すべきこと

(1) 不動産

一番やっかいなものが、不動産の分与方法です。

もちろん、簡単なのは不動産を売ってしまい、現金に換え、諸経費(不動産屋への仲介手数料、ハウスクリーニング代等)を引いて残ったお金を分ければいいだけですから、話は簡単です。

しかし、多くの場合、売却せずに不動産そのものをどちらかが取得したり、あるいはそのまま住み続けるようなケースがほとんどです。

これに住宅ローンがまだ残っていたり、加えてどちらかの実家が購入の際にいくらか資金援助をしていたり、などということになるとかなり複雑な問題となります。

  1.  基本的な分与方法

    不動産を取得する方が、取得しない方に不動産の「価値」の1/2の金額を支払う。

    不動産は、それ自体で1個の財産ですので、羊羹みたいにスパッと1/2に切れるわけではありません。

    したがって、取得する方がしない方に価値の1/2に相当するお金を支払うのです。そうすれば不動産について互いに平等に分与されたことになります。

    なお、夫だけがローンを支払っていたような場合でもそれが同居期間中のことであれば基本的に比率は1/2です。同居している限り、どちらがローンを支払おうと「夫婦共同生活の結果成し遂げた、つまり夫婦が共に平等に貢献した」と評価されるのです。妻が家事や育児で家庭を守ったからこそ夫は稼働してローンを支払うことができた、という発想が根本的にあるのですね。

    例えば、時価1000万円の不動産がある場合、その不動産については基本的には二人とも1/2ずつ権利がある、つまり500万円ずつ権利があるわけです。ですから、夫が取得する場合も、妻が取得する場合も、取得する代わりに相手に500万円払わなければいけないわけです。
    よろしければ以下の動画も参考にしてみてください。

  2.  不動産の「価値」の決め方

    では、不動産の「価値」とはどう決めるのか。

    財産分与の価格の決め方はすべて時価主義です。そうなると、不動産を売却してお金に変えてしまえば時価がわかりますから問題はありませんが、通常はどちらかがそこに居住することにして引き取ることが多いので、不動産屋の査定書や不動産鑑定士の鑑定書で算定するしかありません。

    裁判所の最近の手法は、名の通った不動産会社の査定を2つか3つくらいずつ双方にとらせて提出させ、これらの査定書の中で、だいたい適当と思われる額を裁判所なりに示し、それをもって双方に納得させる、ということが主流です。

    それでも揉めれば正式な不動産鑑定しかありませんが、鑑定したところで、実際の売買でない以上、机上の空論であることには変わりなく、本当の時価ではありません。しかし、話が進まないので、この方法をとるしかありません。

  3.  住宅ローンがまだ残っている場合はどうなるか

    ①不動産の価値は変化する
    住宅ローンが残っている場合には、これはマイナスの価値となりますので、時価より引かれます。たとえば、時価が3000万円の不動産でローンが1000万円残っていた場合には2000万円が不動産の価値となるわけです。

    ②分与の比率は変化しない
    残っているローンがどちらか一方の名義である場合、例えば夫名義のローンが残っている場合というのは、売却して全て清算しない限り、夫が離婚後も支払うことになると思います。

    この場合、意外なことに「分与比率は1/2」から変化しません。

    財産分与は、別居時もしくは離婚時に売却したらどうなるか、という仮定のもとに計算します。
    とすると、仮に売却したとしたら、残っているローンは売却代金から控除されることになるはずであり、これはどちらか一方の手柄というわけではなく、夫婦が平等に負担したといえます。したがって、貢献度や分与比率は1/2なのです。

    例えば、以下のような事例を想定してみて下さい。

    • 不動産の購入時価格:4000万円 すべて夫名義のローンで組む
    • 不動産の時価:3000万円
    • 同居期間中にローン3000万円返済
    • 離婚時にまだ夫名義のローンが1000万円残っている

    この場合、不動産の価値は2000万円ですから、取得する方がしない方に1/2に相当する1000万円支払う必要があります。

    仮に夫が取得する場合は、妻に1000万円払う必要があり、妻が取得する場合でも夫に1000万円を支払う必要があるわけです。

    さらに詳しくは以下の動画をご覧ください。

  4.  分与の割合が1/2から変化する場合

    ではどんな場合に1/2から変化するのか。

    財産分与の割合は基本2/1ですが、以下のようなパターンは割合が1/2から変化します。

    パターン1 購入した時にどちらかの親族から資金を援助してもらった場合
    パターン2 結婚前から持っていた資金で頭金を支払った場合
    パターン3 別居後どちらか片方がローンを支払い続けた場合

    このように、不動産を買うために親が資金援助をしてきたりしていた場合や結婚前から持っていたお金で頭金を出した場合、そして別居した後もどちらかがローンを支払っていたような場合は、その点はもはや「夫婦で平等で貢献した」とは言えませんので、「どの程度貢献したのか」という「寄与率」が異なるとみなされ、この寄与率によって分与する割合が異なってきます。

    例えば以下のような事例を想定し見てください。

    • 不動産の時価:3000万円
    • 購入時の価格:4000万円
    • 購入した時に夫の親が1000万円を援助。
    • 残り3000万円は夫名義でローンを組んだ
    • 同居期間中にローン1000万円を返済。別居後夫がさらに2000万支払。

    このような場合、夫と妻の貢献度の割合は、夫:妻=1000万円+500万円+2000万円:500万円=3500万円:500万円=7:1となります。

    この「7:1」の比率で、不動産の価値3000万円を分ける(ローンは完済しているので時価の3000万円がそのまま価値となる)ので、双方の取り分は、夫:妻=2625万円:375万円となります。

    この不動産を夫が取得する場合は、妻に375万円支払う必要があり、妻が取得する場合は375万円を払う必要があるわけです。

    少し難しい話ですので、これも以下の動画をご参考ください。

  5.  結局不動産価格がマイナスになった場合

    次に、不動産の価値がマイナスとなった場合について説明します。

    ①不動産以外に財産があり、それがマイナス分を上回る場合

    例えば、不動産の時価が3000万円で、残ローンが3200万円あったような場合で、預金500万円がある場合を考えてみて下さい。

    まず不動産は3000万円マイナス3200万円の、マイナス200万円ですが、預金は500万円ですから、500万円マイナス200万円=300万円の総財産があると評価され、計算します。

    ②不動産以外に財産がない場合、もしくはあってもマイナス分を下回る場合

    先の例で例えば預金が500万円ではなく、100万円しかない場合。この場合、不動産のマイナス分200万円を下回っているので、総財産はマイナスです。夫はマイナス100万円です。
    このような場合には、どうなるのでしょうか。答えは、その人への財産分与請求を認めず、また逆にその人から他方に対してマイナス分を負わせることはできません。

    例えば妻に50万円の財産がある場合、夫はマイナス100万円、妻はプラス50万円ですから、両者の差は150万円となります。

    この場合、妻が夫に対して請求できないのは明らかです。では逆に夫は妻に半分の75万円を請求することができるかというと、そうではないのです。妻のプラス分50万円の半分、25万円だけ請求できます。

    つまり自分のマイナス分100万円の半分を負担してもらうことはできない のです。
    かつて裁判例で争われた事案があり、マイナスの価値になってしまった不動産に対して、名義人であり債務者である夫が、妻に対して、マイナスの負債を分担せよと迫ったものが有名ですが。裁判所はこれを否定しました。

    こうなると、夫名義で夫が債務者、という不動産があるだけの財産分与の事件は、妻の立場に立ってみれば、とっとと家を出て、その物件の処理については、放っておけばいい、ということになるわけです。

  6.  まとめ

    以上が不動産を財産分与する場合の考え方です。

    もちろん、実際は不動産の価格は変動しますし、ローンも双方が負っている場合もあるので実際はもう少し複雑になります。

    しかし、少なくとも不動産を取得する方を選べば、幾ばくかの現金を相手に支払う必要があります。ということはそれだけリスクが高い買い物だということです。預貯金や、退職金など、ほかの金融資産が潤沢にないと、かなり不動産を取得するのは難しいと考えた方がいいでしょう。

(2) 預貯金

預貯金は別居時の残高証明をそれぞれが取り寄せて提出することから特定をはかりますが、なかなか当事者は都合の悪い預貯金は隠してしまい、出さないことがよくあります。もっとあるはずだという理論では通りませんから、常日頃から、それぞれがどこにどういう預金をしているかは知っておく必要があります。

よく問題となるのは、独身時代に1000万持っていて、それが婚姻後増えたり減ったりして、今2000万円あるというような場合に、元々持っていた1000万円は特有財産として、別によけて、分与対象財産は1000万円だけだという理屈が通るかという問題です。お金には色がありませんから、増えたり減ったりする預貯金の中で、婚姻前に持っていた1000万円だけは、不動で、混じらず、独立を保っているというのはちょっと疑問です。しかし、今のところ、裁判所の考え方は、まだ単純に引き算して、残ったものを共有財産とする考え方の方が多いようです。しかし、実際問題として婚姻年数が10年20年となってくると、もともとの婚姻当時の持ち込み財産がいくらだったかなど、記録が残っていないことも出てきます。そうなってくるとなかなか判別は難しくなります。金融機関の終始履歴の取り寄せは10年間で断られてしまいます。離婚裁判が長丁場になることが予想される場合には早めに

(3) 生命保険

生命保険は、いざ死亡したときに払われる保険金や、満期保険金が分与対象となるわけではありません。あくまで、別居時の解約返戻金が対象となります。別居時にもし現金に換金したらいくらか、と言う発想になるわけです。解約返戻金の証明書は保険会社に頼めば簡単に出してもらえます。

この場合、独身時代からかけ続けていたようなものについては、支払い年数中の婚姻年数で比率を出して分与対象額を確定することになります。

(4) 退職金

退職金も分与の対象となります。これについては、当サイトで別項目として取り上げていますので、そちらをご参照ください。

(5) 有価証券

有価証券も、もちろん、分与対象財産となります。預貯金と同様に、基本的には別居時に存在した有価証券が分与の対象となります。しかし、預貯金と違って、金額の評価は別居時ではなく、実際に分けるべき時、つまり離婚時とされています。その間に大きな株価の変動があると、大変ややこしい問題が生じてきます。別居した後に、売ってしまったそのあと、株価が暴騰して高額になった場合に、離婚時の株価で分与しなければならないかという問題です。逆に、別居後高額に売り逃げているのに、実際離婚時には株が大暴落していた場合なども裏返しの問題が出てきます。最近の裁判所の手法は、とりあえず、売却して現金かしてしまったものはそのときの価格で分与するというような指導をしていますが、ここらあたり、本当は立法的な措置がはかられないといけないのではないかという印象を禁じ得ません。

6 まとめ

一口に分与対象財産と言っても実にいろいろな種類があり、それぞれに細かい、また法律上も明確に決められておらず、手探りの状況の争点がいっぱいあります。こういった、藪の中をすすむような問題では、行く道を照らしてくれる専門家である弁護士の力は必須です。

どうか、一人で悩んでいないで、一刻も早く、専門家である弁護士に相談することをお勧めします。

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